◆ 明け方 01 ◆
2010年01月11日 (月)
明け方に、ふと目を覚ました高耶だったが、隣に居るはずの直江がいないのでリビングを覗いてみる。
すると直江は、めずらしくベランダで煙草を吸っていた。
眠れないらしい。
直江の煙草は高耶には言えない何かを心に抱えているサインだ。
放っといてやろうと寝室へ戻ってもう一度ベッドに潜り込んだ高耶だったが、今度は自分が眠れない。
「……………」
寝るのはあきらめて、再びベランダへと向かった。
すると直江は、めずらしくベランダで煙草を吸っていた。
眠れないらしい。
直江の煙草は高耶には言えない何かを心に抱えているサインだ。
放っといてやろうと寝室へ戻ってもう一度ベッドに潜り込んだ高耶だったが、今度は自分が眠れない。
「……………」
寝るのはあきらめて、再びベランダへと向かった。
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◆ 誤解 05 ◆
2010年01月10日 (日)
誤解は解けたはずなのに、先程から正体不明の緊張感がふたりを包んでいる。
不安を隠しきれない高耶が無意識のうちに爪を噛んでいると、直江は人通りの少ない路地に車を停めた。
「何だよ」
あたりの暗がりがますます不安を掻き立てる。
「部屋に着くまで我慢するつもりでしたけど」
そう言って直江は、高耶の身体を引き寄せた。
「んッ………」
強引に唇を重ねられて、久しぶりの感覚に鳥肌が立つ。
かなり長い時間をかけて、口付けを味わった直江は、顔を離した後で、
「あなたも我慢できそうになかったでしょう」
と言った。
そうだったのだ。
さっきまでの緊張感は互いに欲情する心を押さえ込んでいたせいだったのだ。
少しだけ乱れた直江の息が高耶にかかって、浴室の幻とは別物であることを証明する。
「……さあな」
直江以上に息を乱した高耶は、再びの口付けを味わいにいった。
不安を隠しきれない高耶が無意識のうちに爪を噛んでいると、直江は人通りの少ない路地に車を停めた。
「何だよ」
あたりの暗がりがますます不安を掻き立てる。
「部屋に着くまで我慢するつもりでしたけど」
そう言って直江は、高耶の身体を引き寄せた。
「んッ………」
強引に唇を重ねられて、久しぶりの感覚に鳥肌が立つ。
かなり長い時間をかけて、口付けを味わった直江は、顔を離した後で、
「あなたも我慢できそうになかったでしょう」
と言った。
そうだったのだ。
さっきまでの緊張感は互いに欲情する心を押さえ込んでいたせいだったのだ。
少しだけ乱れた直江の息が高耶にかかって、浴室の幻とは別物であることを証明する。
「……さあな」
直江以上に息を乱した高耶は、再びの口付けを味わいにいった。
◆ 誤解 04 ◆
2010年01月09日 (土)
「明日の仕事、何時からなんだ」
しばらく続いた無言の後で、高耶が言った。
それ次第で直江が松本を出なければならない時間が決まる。
けれどそれには既に対処済みだった。
「宿を取ってありますから」
「……平気なのか?」
「今日の休日出勤を理由に、無理やり休みを貰いました」
本当にかなり強引だったから、珍しく照弘に咎められてしまったが仕方が無い。
「あなたの事が心配だったので」
高耶は気まずそうに下を向いた。
「さっきのは………」
必死に言葉を選んでいるのが伝わってきて、次の言葉を待つ直江の心までもを真摯にさせた。
直江が思った以上に、高耶は思いつめていたのかもしれない。
「ちょっと苛ついてただけだ。別に本気で言った訳じゃない」
赤信号で車を停めた直江は、高耶の腕を掴んで顔を覗き込んだ。
「ちゃんと目を見て言ってください。本当に、本気じゃなかったかどうか」
「本当だ」
高耶のほうも真剣に直江の眼を覗き込んでくる。
「ちゃんと私を信用出来ますか?」
「信用してる……」
直江は、心持ち潤んだ黒い瞳や、ちいさく噛まれた唇をじっと見つめた。
そしてそれらには、信用の有無などまるでどうでもいいことだと思わせる効果があった。
つまり、理性を吹き飛ばすのに充分な威力があった。
高耶の腕を握る手が、無意識のうちに強くなる。
「信号」
そう注意されるまで、走行中であることすら頭から消えていた。
「……夕飯は?」
「食った」
「なら、部屋まで来ませんか」
「……ああ」
まだ浮かない顔をしている高耶の服を、直江はすでに心の内で脱がせ始めていた。
しばらく続いた無言の後で、高耶が言った。
それ次第で直江が松本を出なければならない時間が決まる。
けれどそれには既に対処済みだった。
「宿を取ってありますから」
「……平気なのか?」
「今日の休日出勤を理由に、無理やり休みを貰いました」
本当にかなり強引だったから、珍しく照弘に咎められてしまったが仕方が無い。
「あなたの事が心配だったので」
高耶は気まずそうに下を向いた。
「さっきのは………」
必死に言葉を選んでいるのが伝わってきて、次の言葉を待つ直江の心までもを真摯にさせた。
直江が思った以上に、高耶は思いつめていたのかもしれない。
「ちょっと苛ついてただけだ。別に本気で言った訳じゃない」
赤信号で車を停めた直江は、高耶の腕を掴んで顔を覗き込んだ。
「ちゃんと目を見て言ってください。本当に、本気じゃなかったかどうか」
「本当だ」
高耶のほうも真剣に直江の眼を覗き込んでくる。
「ちゃんと私を信用出来ますか?」
「信用してる……」
直江は、心持ち潤んだ黒い瞳や、ちいさく噛まれた唇をじっと見つめた。
そしてそれらには、信用の有無などまるでどうでもいいことだと思わせる効果があった。
つまり、理性を吹き飛ばすのに充分な威力があった。
高耶の腕を握る手が、無意識のうちに強くなる。
「信号」
そう注意されるまで、走行中であることすら頭から消えていた。
「……夕飯は?」
「食った」
「なら、部屋まで来ませんか」
「……ああ」
まだ浮かない顔をしている高耶の服を、直江はすでに心の内で脱がせ始めていた。
◆ 誤解 03 ◆
2010年01月08日 (金)
夜遅くに仰木家のチャイムが鳴って、インターホンを取った美弥が直江さんだよーと言った。
驚いてしまった高耶だったが、出ないわけにもいかず、仕方なく玄関の扉を開ける。
「こんばんは」
「………ああ」
本当に、直江だった。
あの電話の後、すぐに車を飛ばしてきたらしい。
「なんだよ、急に」
もちろんあんな切り方をしたせいに決まってる。
その罪悪感からか、単に会うのが久し振り過ぎて照れくさいせいか、まともに顔が見られなかった。
「少し、出られませんか?」
直江の無感情な口調は、心臓に悪い。
それを散らしたくて、高耶は大きく息を吐いた。
「美弥、ちょっと出てくる」
「はあい!ちゃんと戸締りしとくから、遅くなっても平気だよ!」
ちょうど好きなドラマが始まって、テレビの前から離れたくない美弥は、大きな声で答えた。
驚いてしまった高耶だったが、出ないわけにもいかず、仕方なく玄関の扉を開ける。
「こんばんは」
「………ああ」
本当に、直江だった。
あの電話の後、すぐに車を飛ばしてきたらしい。
「なんだよ、急に」
もちろんあんな切り方をしたせいに決まってる。
その罪悪感からか、単に会うのが久し振り過ぎて照れくさいせいか、まともに顔が見られなかった。
「少し、出られませんか?」
直江の無感情な口調は、心臓に悪い。
それを散らしたくて、高耶は大きく息を吐いた。
「美弥、ちょっと出てくる」
「はあい!ちゃんと戸締りしとくから、遅くなっても平気だよ!」
ちょうど好きなドラマが始まって、テレビの前から離れたくない美弥は、大きな声で答えた。
◆ 誤解 02 ◆
2010年01月07日 (木)
休日出勤を終えていつもより早い時間に帰宅した直江は、上着を脱ぎながら夕飯をどうするかと考えていた。
本当ならこの場にいて欲しかった高耶は、最近バイト先で昇格したとかで簡単に休めない立場になってしまったようだ。自分も今は大きな仕事を抱えていて、東京を離れる時間が持てない。
週末はふたりで過ごすことが当たり前のようになっていたから、ひとりだとどうしても寂しい気持ちになってしまう。
とそこへ、携帯電話が鳴り出した。
画面には"仰木高耶"の文字。
「いま終わった」
バイトの終了報告だった。
高耶から、しかも電話でなど珍しい。
自分と会えないことで多少は寂しい思いをしてくれているのだろうかと思うと、笑みが浮かんでしまう。
「お疲れ様でした」
声だけしか聞けないと思うと、ますます会いたくなった。
「次の土曜が待ち遠しいですね」
来週末はやっとふたりとも休みが取れて、会えることになっている。
けれど。
「…………」
返事が無く、なんだか高耶の様子がおかしい。
「高耶さ──」
「女呼ぼうとしてただろ」
唐突に考えもしていなかったことを言われて、すぐに否定できなかった。
「………まさか」
答えるまでに変な間があいてしまって、明らかに怪しく聞こえたはずだ。
きつくなる高耶の視線が、電話の向こう側に見えた。
「やるんなら、オレにわからないようにやれ」
「高耶さん!」
こちらが反論する前に、電話を切られてしまった。
「……………」
高耶がナーバスになっているのは、やはりしばらく会えていないせいだろう。
きっと不安になのだ。
直江は小さくため息を吐くと、電話を置いた。
本当ならこの場にいて欲しかった高耶は、最近バイト先で昇格したとかで簡単に休めない立場になってしまったようだ。自分も今は大きな仕事を抱えていて、東京を離れる時間が持てない。
週末はふたりで過ごすことが当たり前のようになっていたから、ひとりだとどうしても寂しい気持ちになってしまう。
とそこへ、携帯電話が鳴り出した。
画面には"仰木高耶"の文字。
「いま終わった」
バイトの終了報告だった。
高耶から、しかも電話でなど珍しい。
自分と会えないことで多少は寂しい思いをしてくれているのだろうかと思うと、笑みが浮かんでしまう。
「お疲れ様でした」
声だけしか聞けないと思うと、ますます会いたくなった。
「次の土曜が待ち遠しいですね」
来週末はやっとふたりとも休みが取れて、会えることになっている。
けれど。
「…………」
返事が無く、なんだか高耶の様子がおかしい。
「高耶さ──」
「女呼ぼうとしてただろ」
唐突に考えもしていなかったことを言われて、すぐに否定できなかった。
「………まさか」
答えるまでに変な間があいてしまって、明らかに怪しく聞こえたはずだ。
きつくなる高耶の視線が、電話の向こう側に見えた。
「やるんなら、オレにわからないようにやれ」
「高耶さん!」
こちらが反論する前に、電話を切られてしまった。
「……………」
高耶がナーバスになっているのは、やはりしばらく会えていないせいだろう。
きっと不安になのだ。
直江は小さくため息を吐くと、電話を置いた。
◆ 誤解 01 ◆
2010年01月06日 (水)
「は…ァ………ッ」
高耶は白い湯気のこもる浴室で、自らを慰めていた。
右の手があの男のリズム真似て性器を扱けば、左の手は双丘を割って奥深くまで浸入して来ようとする。
「………ふ……ッ……」
いつ家族に開けられてしまうかもわからない扉を気にしながらもこんなことをしているのは、最近全然直江と会っていないせいだ。
高耶のバイトが忙しいのもあるが直江も急に仕事量が増えたらしく、明日は日曜だというのに出勤するのだと言っていた。
「んッ……ン……」
鼻にかかった声が大きくなろうとするのを、必死で抑える。
けれど"我慢などするな"という男の低い声が、耳のすぐ傍で、間違いなくした。
「ア……ア……ッ………」
右手の動きを激しくして数十秒後。
「な……おえッ……っ!」
名前を呼んだ瞬間、全身を甘い痺れが駆け巡って、両腿が痙攣した。
「………はぁッ……は……ッ」
乱れる呼吸を整えながら、シャワーの水で薄まった白濁液が排水溝へと流れていくのをぼんやりと見つめる。
自慰の後はいつも、我慢が出来なかった自分への怒りとの闘いだ。
直江も高耶に会えなくて、こんな思いをすることがあるのだろうか。
けれどあの男が自分を想ってひとり処理する姿は、ちょっと想像がつかない。
「……………」
高耶の胸の怒りは、苦味のある感情に取って変わった。
高耶は白い湯気のこもる浴室で、自らを慰めていた。
右の手があの男のリズム真似て性器を扱けば、左の手は双丘を割って奥深くまで浸入して来ようとする。
「………ふ……ッ……」
いつ家族に開けられてしまうかもわからない扉を気にしながらもこんなことをしているのは、最近全然直江と会っていないせいだ。
高耶のバイトが忙しいのもあるが直江も急に仕事量が増えたらしく、明日は日曜だというのに出勤するのだと言っていた。
「んッ……ン……」
鼻にかかった声が大きくなろうとするのを、必死で抑える。
けれど"我慢などするな"という男の低い声が、耳のすぐ傍で、間違いなくした。
「ア……ア……ッ………」
右手の動きを激しくして数十秒後。
「な……おえッ……っ!」
名前を呼んだ瞬間、全身を甘い痺れが駆け巡って、両腿が痙攣した。
「………はぁッ……は……ッ」
乱れる呼吸を整えながら、シャワーの水で薄まった白濁液が排水溝へと流れていくのをぼんやりと見つめる。
自慰の後はいつも、我慢が出来なかった自分への怒りとの闘いだ。
直江も高耶に会えなくて、こんな思いをすることがあるのだろうか。
けれどあの男が自分を想ってひとり処理する姿は、ちょっと想像がつかない。
「……………」
高耶の胸の怒りは、苦味のある感情に取って変わった。
◆ 午前 04 ◆
2010年01月05日 (火)
とある週末の午前中。というか明け方。
「くそ………」
松本駅に程近いホテルの一室で、高耶は自己嫌悪に陥っていた。
食事のあと、誘われるままに直江の部屋へとやってきた高耶は、事後に疲れて眠り込んでしまったのだ。
そろそろ送りますよ、と直江に起こされて、鉛のように重い瞼を無理やり持ち上げて時計を見ると、既にすぐにでも出勤しないといけない時間ではないか。
今日のバイトは早番なのだ。
「くそ………」
たぶん二時間も寝ていない。
家を出る時だって今日は帰ると言って出たのに、外泊の連絡も入れていない。
最近はこんなことが多すぎて、美弥は心配すらしてくれなくなった。
頭をがしがしとかきむしる高耶を尻目に知らん顔をしている直江は、よくみると口元が笑っている。
「くそ……っ!」
手元にあった枕を、直江の顔をめがけて思いっきり投げつけた。
「くそ………」
松本駅に程近いホテルの一室で、高耶は自己嫌悪に陥っていた。
食事のあと、誘われるままに直江の部屋へとやってきた高耶は、事後に疲れて眠り込んでしまったのだ。
そろそろ送りますよ、と直江に起こされて、鉛のように重い瞼を無理やり持ち上げて時計を見ると、既にすぐにでも出勤しないといけない時間ではないか。
今日のバイトは早番なのだ。
「くそ………」
たぶん二時間も寝ていない。
家を出る時だって今日は帰ると言って出たのに、外泊の連絡も入れていない。
最近はこんなことが多すぎて、美弥は心配すらしてくれなくなった。
頭をがしがしとかきむしる高耶を尻目に知らん顔をしている直江は、よくみると口元が笑っている。
「くそ……っ!」
手元にあった枕を、直江の顔をめがけて思いっきり投げつけた。
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◆
ホワイトデー その5
◆
03月14日(日 )
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ホワイトデー その4
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03月14日(日 )
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03月13日(土 )
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