◆ バレンタイン その3 ◆
2010年02月13日 (土)
終業チャイムの後。
「なあ、森野」
「なーにー?」
高耶は譲が部活へと向かったのを確認して、沙織に声をかけた。
「お前、また譲にチョコやるのか」
「バレンタイン?当たり前よっ」
当然、という顔で頷いていた沙織は、ハッ!!と大げさなリアクションを取った。
「まさか、それって……!成田くんに探りいれてこいって言われたとか!?」
とうとう譲が自分の動向を気にしてくれるようになったのか!?と沙織は期待に胸を膨らます。
「んなわけねーだろ」
「………そうだよね」
シュンとする沙織の隣で、高耶は机につっぷした。
「どうすっかなあ……」
そんな高耶を見て、今度は俄然、テンションをあげてくる。
「え!?仰木くん、まさか逆チョコっ!?」
「ギャクチョコ?」
高耶には、その言葉の意味がわからない。
「あげるんでしょう!東京の彼女に!」
「何だよ、東京の彼女って」
「うわさだよ~、毎週末東京まで会いにいってるって」
「……んなのいねーし」
「そうなの?」
なあんだ、とつまらなそうな顔になる沙織に背を向けて、高耶は大きくため息をついた。
「なあ、森野」
「なーにー?」
高耶は譲が部活へと向かったのを確認して、沙織に声をかけた。
「お前、また譲にチョコやるのか」
「バレンタイン?当たり前よっ」
当然、という顔で頷いていた沙織は、ハッ!!と大げさなリアクションを取った。
「まさか、それって……!成田くんに探りいれてこいって言われたとか!?」
とうとう譲が自分の動向を気にしてくれるようになったのか!?と沙織は期待に胸を膨らます。
「んなわけねーだろ」
「………そうだよね」
シュンとする沙織の隣で、高耶は机につっぷした。
「どうすっかなあ……」
そんな高耶を見て、今度は俄然、テンションをあげてくる。
「え!?仰木くん、まさか逆チョコっ!?」
「ギャクチョコ?」
高耶には、その言葉の意味がわからない。
「あげるんでしょう!東京の彼女に!」
「何だよ、東京の彼女って」
「うわさだよ~、毎週末東京まで会いにいってるって」
「……んなのいねーし」
「そうなの?」
なあんだ、とつまらなそうな顔になる沙織に背を向けて、高耶は大きくため息をついた。
PR
◆ バレンタイン その2 ◆
2010年02月13日 (土)
夕飯の後。
美弥がリビングでお菓子の本を開いていた。
それを見て、直江の微妙な発言を思い出す。
「今年もまた何か作るのか?」
「作るよー」
美弥が必ず手作のお菓子をくれるようになったのは、いつだっただろう?
友達の家で作ってきたクッキーが、一番最初だった。
そういえば小さい頃、母親も毎年手作りのお菓子を用意していてくれた。
美弥もそれを覚えているのかもしれない。
「今年はお兄ちゃんも一緒に作る?」
「オレ?何で?」
「ほら、直江さんに」
「……作るわけねーだろ」
「そうだよねえ」
美弥はなんだか大人びた顔で言った。
「直江さん、かわいそう」
「………美弥?」
美弥は自分と直江がどういう関係だと思っているのだろう?
ちょっと怖くて、尋ねることはできなかった。
美弥がリビングでお菓子の本を開いていた。
それを見て、直江の微妙な発言を思い出す。
「今年もまた何か作るのか?」
「作るよー」
美弥が必ず手作のお菓子をくれるようになったのは、いつだっただろう?
友達の家で作ってきたクッキーが、一番最初だった。
そういえば小さい頃、母親も毎年手作りのお菓子を用意していてくれた。
美弥もそれを覚えているのかもしれない。
「今年はお兄ちゃんも一緒に作る?」
「オレ?何で?」
「ほら、直江さんに」
「……作るわけねーだろ」
「そうだよねえ」
美弥はなんだか大人びた顔で言った。
「直江さん、かわいそう」
「………美弥?」
美弥は自分と直江がどういう関係だと思っているのだろう?
ちょっと怖くて、尋ねることはできなかった。
◆ バレンタイン その1 ◆
2010年02月12日 (金)
週末の午後。
「そういえば」
直江が思い出したように口を開いた。
「来週はバレンタインデーですね」
「あー」
言われてみればもう二月も半ば近い。
何曜だったかな、とカレンダーを見ていると、日曜ですよ、と言われた。
「オレは別に、何もいらないからな」
そう言ったってどうせ何かしら用意してくるんだろうな、と思っていると、
「高耶さん……」
直江がなんともいえない表情になっていた。
「ん?」
「やっぱり、自分が貰う日だと思ってるんですね」
「……どういう意味だよ」
「いえ、別に何も」
首を横に振る直江を見ながら、高耶は眉間にしわを寄せた。
「そういえば」
直江が思い出したように口を開いた。
「来週はバレンタインデーですね」
「あー」
言われてみればもう二月も半ば近い。
何曜だったかな、とカレンダーを見ていると、日曜ですよ、と言われた。
「オレは別に、何もいらないからな」
そう言ったってどうせ何かしら用意してくるんだろうな、と思っていると、
「高耶さん……」
直江がなんともいえない表情になっていた。
「ん?」
「やっぱり、自分が貰う日だと思ってるんですね」
「……どういう意味だよ」
「いえ、別に何も」
首を横に振る直江を見ながら、高耶は眉間にしわを寄せた。
◆ 未来 02 ◆
2010年01月22日 (金)
静かな部屋で、こうしてふたりだけで布団にくるまっていると、まるで今から産まれ出る胎児になったように思えてくる。
これから始まる未知なる人生。
「ずっと一緒にいられるように、ひとりの人間になって産まれよう」
そんな夢みたいなことを言って、彼は微笑った。
これから始まる未知なる人生。
「ずっと一緒にいられるように、ひとりの人間になって産まれよう」
そんな夢みたいなことを言って、彼は微笑った。
◆ 未来 01 ◆
2010年01月21日 (木)
静かな部屋で、こうしてふたりだけで布団にくるまっていると、まるで世界にはふたりしかいないように思えてくる。
最期のひとりになるのは、自分なのか、目の前の男なのか。
「ふたり同時がいい」
そんな夢みたいなことを言って、男は微笑った。
最期のひとりになるのは、自分なのか、目の前の男なのか。
「ふたり同時がいい」
そんな夢みたいなことを言って、男は微笑った。
◆ 寝坊 02 ◆
2010年01月20日 (水)
「ほら、起きてください」
今日は午後からバイトがあるそうだから、高耶を朝一で松本に帰さなくてはいけないのだ。
それなのに高耶は、起きようとしない。
それどころかくるまった布団の中から手だけを出して、直江のズボンのベルトを緩めたりしてくる。
「………知りませんよ」
自制のきかなくなった直江が派手に布団を引き剥がすと、高耶は悲鳴にも似た笑い声をあげた。
今日は午後からバイトがあるそうだから、高耶を朝一で松本に帰さなくてはいけないのだ。
それなのに高耶は、起きようとしない。
それどころかくるまった布団の中から手だけを出して、直江のズボンのベルトを緩めたりしてくる。
「………知りませんよ」
自制のきかなくなった直江が派手に布団を引き剥がすと、高耶は悲鳴にも似た笑い声をあげた。
◆ 寝坊 01 ◆
2010年01月19日 (火)
「げ」
目を覚まして時計をみると、とても朝とは言えない時間。
寝過ごしてしまったようだ。
「………はら減った」
高耶は起き上がると、大きく伸びをした。
傍らにはめずらしく、まだ布団にもぐったままの直江がいる。
結局昨日は何時まで起きていたんだっけ?
思い返してみても、高耶には終盤の記憶が殆どなかった。
「起きろよ、直江」
布団を剥がそうと引っ張っていると、すでに眼を覚ましていたらしい直江に逆に布団の中へと引きずりこまれそうになる。
「こら、やめろって。こら………ッ………」
結局高耶が布団を出られたのは、昼もかなり過ぎた頃だった。
目を覚まして時計をみると、とても朝とは言えない時間。
寝過ごしてしまったようだ。
「………はら減った」
高耶は起き上がると、大きく伸びをした。
傍らにはめずらしく、まだ布団にもぐったままの直江がいる。
結局昨日は何時まで起きていたんだっけ?
思い返してみても、高耶には終盤の記憶が殆どなかった。
「起きろよ、直江」
布団を剥がそうと引っ張っていると、すでに眼を覚ましていたらしい直江に逆に布団の中へと引きずりこまれそうになる。
「こら、やめろって。こら………ッ………」
結局高耶が布団を出られたのは、昼もかなり過ぎた頃だった。
10≪ | 2024/11 | ≫12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
∥ 最新話 ∥
◆
ホワイトデー その5
◆
03月14日(日 )
◆
ホワイトデー その4
◆
03月14日(日 )
◆
ホワイトデー その3
◆
03月13日(土 )
◆
ホワイトデー その2
◆
03月13日(土 )
◆
ホワイトデー その1
◆
03月12日(金 )
◆
バレンタイン その5
◆
02月14日(日 )
◆
バレンタイン その4
◆
02月14日(日 )
◆
バレンタイン その3
◆
02月13日(土 )
◆
バレンタイン その2
◆
02月13日(土 )
◆
バレンタイン その1
◆
02月12日(金 )